松浦祐己のコラム「呼吸と横隔膜」

 

石原さとみ主演のテレビドラマ「アンナチュラル」(注)での殺人事件。腕時計型バイタルセンサー(使用者の体温、心拍などの生体情報を無線で発信できるもの)を開発する会社の社員が、バイタルセンサーを電流が流れるように改造し、知らずにつけた人が殺されてしまう話です。

 (注) 2018年1月~3月 TBS系で放送

パソコンの操作によりセンサーから流した電流が、手首から腕を通って頸椎の神経にショックを与え、神経が麻痺する。頸椎の神経と同じところから横隔膜を動かす神経が出ているため、横隔膜が麻痺して呼吸ができなくなり窒息死してしまう事件でした。

 

人間は横隔膜の運動で呼吸ができ、生きられるのです。呼吸にとって最も重要とされる筋肉は横隔膜なのです。

横隔膜は身体の内部を「横」切り、胸と腹を「隔」てる、厚さ2.1mm~2.5mmの「膜」状のドームのような筋肉です。吸息運動の主動作筋で1回換気量の80%を担うとされる最大の呼吸筋です。

肺自体には筋肉がないため自ら膨らんだりしぼんだりすることはできません。日常行っている無意識の呼吸(鼻呼吸)では、横隔膜が下がることで肺が膨らんで空気が取り込めるのです。息を吸った時に下がった横隔膜は、息を吐く時は弛緩して元の形に戻り、肺から空気が吐き出されます。

 

これに対し、意識的に行う呼吸(腹式呼吸など)では、呼吸筋群と呼ばれる筋肉を使い、長くゆっくりと息を吐きます。

お腹を凹ませながら横隔膜をストレッチして上方に押し上げます。その刺激が脳幹部に伝わり、副交感神経が活性化します。

 

呼吸中枢は脳幹部の延髄にありますが、副交感神経も同じく脳幹部の延髄・橋(きょう)から出ているので、両神経はお互いに強く関連し合っています。

そのため、意識してゆっくり呼吸をする→呼吸中枢に働きかける→副交感神経が優位になる→リラックス効果が得られる、ことにつながります。

 

練功は呼吸運動ですので、ゆったりとした長い意識呼吸を心がけるようにしましょう。10秒以上息を吐き続けると副交感神経が活性化されます。

 

日本健康づくり協会代表 

    松浦祐己 

  (まつうらゆうき)