松浦祐己のコラム「高齢者とフレイル~要介護状態にならないために」

 

 

「高齢者」とはいったい何歳以上の人のことでしょうか。

WHO(世界保健機関)は65歳~74歳を「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」としています。

日本老年医学会は、現在の高齢者は10~20年前に比べて5~10歳の若返りが見られることから、65歳~74歳を「准高齢者」、75歳~89歳を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」と区分することを提言しています。

 

日本老年医学会は75歳以上の高齢者の要介護の原因の1位は“フレイル”であると言っています。

フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態のことです。

 

フレイルは英語のFrailty(フレイルティ)に由来する言葉で、虚弱、老衰、衰弱などの訳語がありますが、それらの訳語ではFrailtyに含まれる「適切な予防・治療をすることで再び健常な状態に戻ることが可能」というニュアンスを伝えられないため、片仮名の「フレイル」を使用するようになりました。

 

フレイルの原因のひとつに“サルコペニア(筋肉減少)”が挙げられます。

ヒトの筋肉量は30歳代から少しずつ減少し、80歳頃までに約30%の筋肉が失われると言われています。

筋肉量が減少する→活動量が減る→食欲低下を招く→身体機能が低下してフレイルになる→要介護状態になる、と移行していくのです。

 

このような加齢によるフレイルのみでなく、昨年来のコロナ禍の自粛生活の影響で筋肉が衰えたコロナフレイルの例も見られます。さらに、「人との交流がなくなりうつ状態になった」「物忘れがひどくなった」などの精神的・心理的フレイルも確認されています。

 

フレイルの予防・治療には、適度な運動、栄養摂取、コミュニケーション(友達とおしゃべりをする、地域の活動に参加するなど)が重要と考えられています。

マスクを着用しソーシャルディスタンスに気をつけて近所を散歩してみたり、友人と電話で連絡を取り合ったり、など過ごし方を工夫するのも大事だと思います。

練功十八法で身体を動かし呼吸をすることもフレイルの予防に役立ちます。ぜひ練功を続けて、健康を維持していきましょう。

 


 

参考資料:

荒井秀典「フレイルの意義」(『日本老年医学会雑誌』51巻6号 2014.11)

飯島勝矢「Withコロナ時代のフレイル対策-日本老年医学会からの提言」(2021.4.7「健康長寿ネット」公開)