松浦祐己のコラム「練功の源流を訪ねる②」

 

 

「導引」動作のほとんどは禽獣(きんじゅう)、野生動物の模倣から始まったといわれます。昔の人達は「動物が元気なのは自然に沿った生き方をしているからで、人間が病気になるのは不自然な習慣(ライフスタイル)のためである。動物の動作模倣により動物が持つ生命力(エネルギー)が心身に備わるのではないか」と考えました。

そこで自然の理にかなった動物の動きや習性が観察、研究され、人間が健康になるための方法として数多くの「導引」動作が生み出されました。

 

中国後漢末期(1800年前)、外科の元祖で不老長生の術にも精通していた「華佗(かだ)」によって「五禽戯(ごきんぎ)」が創編されました。五つの禽獣(虎・鹿・熊・猿・鳥)の動きを真似た運動です(下図)。

五禽戯(明・万暦時代刻本『東夷広版』「赤鳳髄」より)

 

虎は獲物を探し、鹿はしなやかに疾走し、熊は相手を威嚇して動き回り、猿は餌をつかみ取り、鳥は優雅に大空を飛ぶ。それぞれの動きをイメージした動作は身体によい運動効果があります。

虎の動きは「腎臓」、鹿の動きは「肝臓」、熊の動きは「脾臓、いわゆる脾胃(ひい)消化機能全体」、猿の動きは「心臓」、鳥の動きは「肺臓」を丈夫にします。

 

練功十八法前段第5節「展翅飛翔(ぢゃんちぃふぇいしぁん)」は翅(はね)を展(ひろ)げて飛翔する鳥の動作です。

翼を広げ天空を旋回する鳥になって肩甲骨を動かしながら肘を回す動作は、呼吸筋を動かし肺機能を助けて呼吸を楽にします。

(次回につづく)

 

日本健康づくり協会代表 

    松浦祐己 

  (まつうらゆうき)