松浦祐己のコラム「練功の源流を訪ねる①」

 

 

練功十八法の源流は「導引」です。2500~2800年前、中国春秋戦国時代、不老不死の仙人になることを究極の理想とした神仙家の長生術にあります。しかし、当時はまだ「導引」とは呼ばれていませんでした。

 

「導引」の名称は、晋(AD265~420)の李頥(りい)が「荘子」刻意篇を注釈した時の語句「導気令和、引体令柔」に由来し、「導気」の「導」と「引体」の「引」の文字を組み合わせたものです。「導気令和」の「令」は「~せしむ(~させる)」と読み、「気を体内に導いて調和させる」の意味です。「引体令柔」の「引体」は「伸展」のこと、「令柔」は「柔らかにする」ことで「筋肉を伸ばし関節をゆるめて体を柔軟にする」の意味です。

「導気令和」の「導気」の「気」とは何かを説明しましょう。

古代中国人は「万物はすべて気でできている」、「気は自然現象の原動力(エネルギー)、生物の生命力である」と考えたようです。

端的に言えば「気」によって人間は生き、「気」が無くなれば人は亡くなるということになります。「気」には大きく二つあるとされます。一つは自然界から摂りいれる「気(空気)」、もう一つは体内を巡る「気」です。「気が常に体内を巡ることによって身体の機能が正常に活動する、全身を気が滞りなく巡っていれば身体の調和が図られ健康でいられる」と考えました。

 

「気」の訓読みは「いき(息)」です。呼吸(気息)により新鮮な気を体内に取り込み、気と一体になった血液を「気血」と言います。「気血」がよく体内を流れると内臓は活性化されます。身体の老廃物を含んだ古い血は「邪気(悪い気)」と言われ、「気血」によって体外に排出されます。

 

「気血」の流れが衰え「邪気」が停滞すると排出が上手く行かなくなり、身体は不調になって病気の原因になります。そこで「呼吸」と同調させながら筋肉や関節に溜まった邪気を排出させて血液を浄化する「引体(伸展)」が大事になります。

身体の中には「経絡」という「気の道」があり、五臓六腑(ごぞうろっぷ)とつながっています。五臓は心臓・肺・脾臓・肝臓・腎臓、六腑は小腸・大腸・胃・胆のう・膀胱・三焦(リンパ管)のことです。

「引体(伸展)」により経絡上に散在している「ツボ」が刺激されて血行が良くなり、「五臓六腑に染み渡る」のです。

 

「導引」は「導気」「引体」の組み合わせでできています。健康の維持、増強、回復は「呼吸(気息)」と「伸展」を基本原則とし、その流れにあるのが「練功十八法」なのです。

(次回につづく)

 

 

日本健康づくり協会代表 

    松浦祐己 

  (まつうらゆうき)